最高の栄誉にふさわしい舞台を
JRA賞は「年度代表馬」をはじめ、顕著な活躍を見せた人馬や、馬事文化の発展に功績のあった方々を表彰する制度です。その授賞式は中央競馬における最も権威あるイベントとして位置づけられます。
PRCは1987年度の第1回以来、毎年この企画・運営に携わっており、まさに年に一度の一大事業となっています。ここでは授賞式当日はもちろんのこと、何か月も前から始まる準備を含め、2018年度のJRA賞授賞式に関する業務の一部を紹介します。
JRA賞授賞式の企画・運営は入札を経て委託されます。
企画入札は例年、式の約3か月前に行われますが、その準備は夏には始まっています。授賞式の核となる演出やステージ装飾、制作物のデザインなど、他社よりも魅力的な企画を提案するために、チームで何度も会議を行い、プランを練り上げていきます。
当社は毎年、JRA賞授賞式の運営に携わっていますが、受託は入札を経て決定します。なので、企画書を作成して10月下旬に行われる他社との競合プレゼンに臨み、無事落札するまでが、この業務の最初の山場になります。
企画は夏頃から動き出します。中心となる3名ほどで会議を重ね、まずは大枠でその年のテーマを考えます。これをもとに音楽や装飾の演出プランが決まるわけですね。音楽などは受注が決まってから動いていたのでは遅いので、担当者はこの段階から動き始めます。
企画書の作成と入札時のプレゼンで意識するのは、やはりこれまで携わってきた実績、スムーズな運営といった、他社にはない当社の強みです。その上で、さらに前年から改善したポイントを強くアピールするようにしています。
大切なのは、あくまでも競馬界で最高の栄誉にふさわしい格調高い授賞式を演出すること。ホスピタリティ(心からのおもてなし)と信頼性の高い運営に軸足を置くことは、忘れないようにしています。
授賞式は例年1月下旬に都内のホテルで行われますが、ホテルとの具体的な打ち合わせは、年内に始める必要があります。
打ち合わせでは、ここまでのブラッシュアップを経て固まった演出と装飾のプランをもとに、会場制作のスケジュール、各装備品のチェックなど、さまざまな項目について確認します。
JRA賞の受賞馬・受賞者の発表は年初に行われますが、授賞式で配布するパンフレットは、そこから制作を始めていては印刷・製本が間に合いません。そのため、受賞が見込まれる人馬については年内にカメラマンから写真を取り寄せ、セレクションを進めておきます。
年が明け、1月8日にJRA賞の受賞者、受賞馬が発表されると、いよいよ準備も最終段階に入ります。その一つが、重要な演出である受賞者、受賞馬の紹介時に流される映像の制作です。映像は当社が管理する膨大な量のアーカイブから素材を得ます。そうした映像の管理と編集もまた、長年、その業務に携わってきた当社の強みの一つとなっています。
式の当日、受賞者や受賞馬関係者に胸に付けていただくお名前入りの胸章リボンの用意も、重要な業務です。出席者が決定してから授賞式までは約20日。そこから同伴者を確認し、その分も手配。納品されたリボンの検品は、丁寧に校正し、間違いのないように確認していきます。2018年度は約180名分のリボンを用意しました。
受賞者、受賞馬関係者に贈られるJRA賞トロフィー。検品では、トロフィープレートの表記の文字校正から傷の確認、トロフィーと台座の接続部の確認など、細部までチェック作業を行います。もし補修が必要な場合は、検品に立ち会っている職人にその場で補修を依頼します。
いよいよ授賞式が間近に迫り、各業務も同時進行で行われることとなります。2018年度は、この日に音楽演出のリハーサルを都内のスタジオで行いました。
男女2名のオペラ歌手、弦楽ミニオーケストラが出演し、オープニングや受賞者の登壇時に生演奏でムードを盛り上げ、高揚感を演出。そうした演奏のタイミングの確認や、舞台上の動きなどをチェックしました。
授賞式の企画・運営はプロモーション事業部・サービス事業課の業務ですが、当日の運営には他部署のスタッフも含め、20名以上が携わります。全体ミーティングでは、さまざまなオペレーションについて情報を共有し、小さな疑問点もこの場で解決し、各スタッフが臨機応変な対応が可能になるように準備します。
司会者との打ち合わせも入念に行います。映像演出にあわせて台本読みを行っていただき、読み上げのスピードやタイミングを調整します。
翌日に授賞式を迎えるホテルの会場に、ステージ装飾や音響、照明演出機材などを搬入し、設営を開始します。会場が前日遅くまで別の宴席で使用されている場合は深夜の設営となり、限られた時間の中で、集中した作業が続きます。また運営用のバックヤードでは、胸章リボンの用意や備品の整理など、やはり前日に進めておくべき準備が行われます。
ちなみに授賞式は例年月曜日に行われます。土・日の競馬開催で、受賞者の移動・出席に関わるアクシデントなどが起きていないかにも注意を配りながら最後の準備を進めます。
ついに迎えたJRA賞授賞式当日。当社のスタッフのみならず、すべてのスタッフが一丸となって運営に臨みます。
当社のスタッフは、日頃から中央競馬やそのPR活動に関わる業務を行っており、そこで身につけたスキルや経験は、受賞者へのホスピタリティに、最大限に生かされます。
授賞式の演出で最も重要なのは、やはりオープニングです。ここ何年かでオペラ歌手とミニオーケストラというパターンが定着し、その中で年ごとにテーマを決めて曲を探しています。
2018年は自然災害が多く、馬産地にも被害がありました。そういったものを乗り越えて競馬が開催されたことへの喜び、“生きる喜び”のようなものをテーマに据えた『Vivere』という曲を、オープニングには選びました。
授賞式のハイライトともいえる年度代表馬表彰のアタック曲は、インパクトの強さでオペラ『タンホイザー』にしましたが、今年はアーモンドアイの可能性が高かったため、牝馬を讃える英語の歌詞を作詞家に依頼しつけてもらっています。
第2部のパーティーのオープニングは、歌い手がオペラ歌手という制約の中で、曲はロックバンドのクイーンの『ドント・ストップ・ミー・ナウ』を使いました。JRAの担当者と話をする中で、ちょうど映画『ボヘミアン・ラプソディ』が評判になっていたこともあり、これでやってみよう、となったわけです。
最終的に、歌手の方にはノリに合わせて自由に動いてもらい、とても楽しいステージになりました。ご来場の皆様からも拍手をいただいたりして、評判もすごくよかったです。チャレンジした甲斐がありましたね。
過去にもJRA賞は受賞していますが、やはり年度代表馬というと、その年の一番の馬ということなので、そういう馬に携わって、(年度代表馬受賞の)栄誉に浴したということは、本当にうれしい限りですね。
あくまで馬が主体ですから、馬を故障させずに、評価されるような結果を残すことができたのは、とてもうれしいです。
2018年度は、私は主に入札対応と、落札後は運営の統括、特に司会者対応を含めた進行の管理を担当しました。前年に同じ業務を経験したことで、より全体の動きが見えるようになっているのを自分で実感しましたね。必要なときに、的確な指示を出して対応することが出来ました。
終わってホッとしたのは、第2部のパーティーが終わり、人が会場からいなくなったときに、JRAの担当者の方から、よかったです、お疲れさまでしたと声をかけていただいた瞬間です。半年近く携わってきた仕事ですからね。
授賞式が終わったあともまだ業務はいろいろと残っています。トロフィーの発送もそうですし、反省会もすぐにやらないと意味がありません。毎年、より良い企画を提案していけることこそが、当社の強みですから。
私は授賞式全体を統括しつつ、音楽を含めた演出を担当しています。全体という意味では、やはり受賞者を含むVIPには毎年、気を使います。もしそこで何か突発的な変更があると、司会者だけでなく演奏や照明、誘導コンパニオンの動きまで、すべてで対応しなくてはいけませんから。
2018年度で印象的だったのは、JRA賞馬事文化賞功労賞を受賞された原良馬さんです。ご高齢のため車椅子でのご出席だったのですが、受賞者の方々も含め、関係者の方々から久しぶりに原さんに会えたことを喜ぶ声がたくさん聞かれました。
私はもう何年も全体統括と演出の担当をしていますが、今後は若いスタッフに任せてみたいですね。自分がやるのとはまた違う発想のものができそうで、楽しみです。大事な部分は引き継ぎつつ、後進を育成していければいいですね。