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PROJECT STORY
プロジェクトストーリー
02
密着!2018ジャパンカップ
東京競馬場、そして全国で流れるJRAオフィシャル映像の制作
映像部・映像システム課
JRAより、映像部・映像システム課が受託している「JRAオフィシャル ライブ映像の制作」業務は、以下のような仕組みで行われています。

競馬場のモニターで放映される映像は、各開催競馬場の中継車で作られています。カメラが撮影した映像はすべてこの中継車に集められ、それらの映像を切り替えながら、馬名や騎手などの文字情報を乗せたり、変更情報を発表したり、分刻みのタイムシートに従ってCM映像を流すなどして、1本のライブ映像を作ります。そして、それが競馬場内のモニターで放映されます。

日本ダービーやジャパンカップ、有馬記念などの大レースでは、あらかじめ用意した映像効果と実際のライブ映像を重ねる「バーチャル映像」も使用されます。

ターフビジョンの映像は画面サイズが特殊で、放映内容も場内のモニターとは異なるため、中継車ではなく競馬場の「大型(ターフビジョン)映像装置操作室」で作られます。

こうした業務は、開催日の何日も前から準備が行われています。ここでは2018年のジャパンカップの「バーチャル映像」制作の流れを中心に、具体的な業務の内容を紹介していきます。

中継車の外観
中継車内の様子
Point!
「A送」「B送」「センター送」とは

中継車で制作するライブ映像は、正確には3本あります。

「レース実況・パドック」と書かれた場内モニターで流れる、開催競馬場の映像(東京競馬場であれば東京の映像)が通称「A送」。「全レース実況」と書かれた場内モニターで流れる、全場のパドックやレースの映像が「B送」。そして他の競馬場やウインズ、グリーンチャンネルなどで使用するための映像は「センター送」と呼ばれ、その名の通り場内ではなく、映像センターへと送られます。

ポイントA送B送センター送
2018ジャパンカップ
「バーチャル映像」制作の流れ
Day 1
2018/11/01
企画打ち合わせ

社内で打ち合わせを行い、ジャパンカップでJRAに提案するバーチャル映像の企画や演出を話し合います。まず前年の映像を検証するところから始まり、そこで出た改善点などを踏まえ、新たなアイデアを模索します。企画として面白いかどうか。バーチャル映像として成立するか。さまざまな意見を出し合ってまとめます。

企画打ち合わせ
Day 7
2018/11/07
JRAへの企画提案

JRAの映像担当職員に、バーチャル映像の企画・演出のプレゼンテーションを行います。ここでも「お客さまのジャパンカップに対する期待感を高める演出であるか」、「インフォメーションとして適切であるか」などをポイントに議論が行われ、最終的な企画を決定します。

企画の決定後、バーチャル演出の作り込みを開始します。

JRAへの企画提案
Day 23
2018/11/23
東京競馬場でリハーサル、最終調整

制作したバーチャル演出を、東京競馬場で実際のカメラの映像に乗せるリハーサルをジャパンカップ前々日の金曜日に行います。リハーサルはジャパンカップ当日のタイムシートに従い、第1レースからジャパンカップまで一通り行います。

バーチャル演出はプログラムで動き、カメラマンがそれを見ながらカメラを動かして、「バーチャル」と「実際のカメラの映像」とをうまく重ねることで成立します。そのため、カメラマンはインカムでエンジニアと話をしながら、細かいカメラの動かし方を詰めていきます。こうした調整作業は、当日朝の開門前まで行われます。

現場でバーチャル演出の最終調整を行う
バーチャルの入った映像を見ながら調整するカメラマン
Interview
「遊び心を取り入れつつ、お客さまに高揚感を持ってレースを楽しんでいただければ」
by 映像システム課 バーチャル映像担当

バーチャル映像は、あらかじめ制作した映像効果を、実際のカメラの映像に重ねて放映するものです。もっとも一般的なのが、レースの直線で残り距離を「200(メートル)」のように線で表示させるものですね。

インタビュー風景

初めてバーチャル映像の放映を行ったのは2003年の11月で、現在は日本ダービー、ジャパンカップ、有馬記念、あとは札幌のワールドオールスタージョッキーズで使用しています。2018年に限っては、JBC競走でも行いました。1か月前くらいから準備するものなので、ルーティンというよりは、それぞれが企画からスタートするスペシャルな業務という意識が強いです。

当日に内容を変更するのは難しいので、現役馬に関してあまり突っ込んだものは作りづらいのですが、2017年の有馬記念ではラストランとなるキタサンブラックに寄ったものを何編か作りました。一般レースの発走前に、キタサンブラックの足跡を振り返ったり、ウイニングランでは「おめでとう キタサンブラック」というような文字を重ねたりしました。

キタサンブラックのラストラン演出

クリエイターの方は日々、色々な演出を研究されていて、目新しい企画を提案してくれます。採用はしませんでしたが、芝コースがボコッとへこんで、楽隊が出てきてファンファーレ、というものを見たときにはびっくりしました(笑)。

過去に「攻めた」演出では、ワールドオールスタージョッキーズで、向正面の奥から優勝騎手の上半身が巨人のように登場して、辺りが暗くなって花火が上がるというものをやったことがあります。お祭り的な雰囲気を出せて、楽しいものになったと思います。

これがうまくいったのは、札幌競馬場の向正面の奥が森になっていたことが大きかったと思います。いかにも巨人が出てきそうな雰囲気があって。そのように、競馬場ごとの特徴を生かしたバーチャル映像というのは、やりがいがあります。先日のJBC競走は京都だったので、馬場内の池を使ってみました。

バーチャル映像はあくまでもプラスアルファで、その場の空気を特別にするもの。通常の中継車から発信する映像とは違い、遊び心を取り入れつつ、お客さまに高揚感を持ってレースを楽しんでいただくものです。これからも自分がファンとして競馬を見ていた頃のことを思い出しながら、楽しく、しかし独りよがりにならないように企画を考えていきたいと思います。

WASJの花火の演出
Day 25
2018/11/25
いざ、ジャパンカップ当日!

バーチャルカメラ以外にも、競馬場にはさまざまなカメラが設置されています。GIレースともなると、その数は約20台。ここでは2018年のジャパンカップを例に、パドックからゴールの瞬間まで、どのカメラがどのような役割を担うのかを紹介していきます。

ジャパンカップ当日
写真をドラッグして左右にスクロール(スマートフォンではスワイプ)させると、レース前の画像と、実際のレース画像とを見比べることができます。
パドックから本馬場入場まで
第1パドックカメラ
場所:フジビュースタンド3階のパドック側
パドックを周回する馬をスタンド側から撮影します。内側から撮影するため、通称「内パドックカメラ」とも呼ばれています。
第1パドックカメラ
第1パドックカメラJC
第2パドックカメラ
場所:パドック電光掲示板(トータボード)の横
第1パドックカメラの反対側から撮影します。通称「外パドックカメラ」とも呼ばれています。これら2台のカメラを切り替えて、周回する全馬をフォローします。
第2パドックカメラ
第2パドックカメラJC
パドック内カメラ
場所:パドック内の外側
パドックのすぐ脇で、グラウンドレベルで撮影します。周回する馬の撮影というよりは、アングルを変えたイメージショットの撮影が主な目的です。
パドック内カメラ
パドック内カメラJC
地下馬道カメラ
場所:地下馬道
パドックから検量室前を過ぎ、入場口へ向かう途中の救護所前で、本馬場入場へ向かう馬たちを撮影します。レース終了後は検量室前へ移動して、戻ってきた馬や関係者の様子を撮影します。地下馬道には他に、天井近くに遠隔操作できるカメラも常設しており、GIレース当日以外はこちらを使っています。
地下馬道カメラ
地下馬道カメラJC
検量前カメラ(地下馬道カメラ2)
検量前カメラ(地下馬道カメラ2)JC
入場口下カメラ
場所:ダートコース入場口の下
ジャパンカップの本馬場入場は地下馬道の一番奥となるダートコースの入場口から行われるので、その場所で、今まさに本馬場に出ていく馬を撮影します。レース終了後は芝コース入場口(ウイナーズサークル)下と検量室との間に移動して、戻ってくる勝ち馬を撮影します。
入場口下カメラ
入場口下カメラJC
本馬場入場からレースまで
第1レースカメラ
場所:フジビュースタンド8階
通称「1カメ」。馬場入場、レースなどを撮影するメインカメラです。コース全体をくまなく撮影するため、スタンドのもっとも高い位置に据えられています。向正面の撮影もこのカメラがメインになります。
レースカメラ1
レースカメラ1JC
第2レースカメラ
場所:フジビュースタンド8階(通常は6階)

通称「2カメ」。通常は「1カメ」よりも低いスタンド6階で、レースの最後の直線、ゴール前を撮影します。

そのためゴール板の正面に据えられています。ただし、ジャパンカップ当日はこのカメラの役割を「バーチャルカメラ」が担うため、こちらは「1カメ」と同じ8階へ移動し、主に向正面の馬群全体(レース映像の上部に合成画面で表示する、通称「割り」)を撮影します。

レースカメラ2
レースカメラ2JC
馬場内カメラ
場所:馬場内の東側ターフビジョンの横
通称「3カメ」。5メートルほどの足場の上に設置され、主に馬場入場などを撮影します。高さがあるため、向正面の馬群全体も撮影が可能です。
馬場内カメラ
馬場内カメラJC
バーチャルカメラ
場所:フジビュースタンド6階
バーチャル演出を被せるための、元の映像を撮影する専用カメラです。ジャパンカップでは最後の直線で残り距離の表示(残線)をバーチャルで被せるため、通常「2カメ」が担う直線の撮影を、この「バーチャルカメラ」が担当します。
バーチャルカメラ
バーチャルカメラJC
3~4コーナー待避所(ポケット)カメラ
場所:3~4コーナー中間の待避所
本馬場入場後、スタート直前まで出走馬が待機している待避所を撮影します。ジャパンカップが行われる芝2400メートルでは3~4コーナー中間の待避所を使用します。
3〜4コーナー待避所カメラ
3〜4コーナー待避所カメラJC
スタート地点カメラ
場所:芝2400メートルのスタート地点の外側
発走時刻が近づき、待避所から移動してきた馬がゲート裏で輪乗りを行っている様子や、各馬の枠入りを撮影します。
スタート地点カメラ
スタート地点カメラJC
レースを盛り上げるカメラ
ゲート前ラチ下カメラ
場所:スタート地点の内ラチの下
スタートの瞬間を下からのアングルで撮る、小型の無人カメラです。ケーブルを敷設できない場所なので、映像は無線で飛ばし、スタンド側のスタッフが受信して中継車へ送ります。
ゲート前ラチ下カメラ
ゲート前ラチ下カメラJC
3コーナーカメラ
場所:3コーナーの外側
ジャパンカップでは、スタートから1、2コーナー、向正面までは主に「1カメ」と「2カメ」が撮影します。向正面の馬群が3コーナーに近づくと、このカメラに切り替わり、馬群が3コーナーに向かってきて通過するところを撮影します。
3コーナーカメラ
3コーナーカメラJC
4コーナーカメラ
場所:4コーナーの外側
4コーナーの馬群を近くで撮影します。通常はこのカメラの前を馬群が通過すると、映像は「1カメ」に切り替わり、さらに「2カメ」によるゴール前の映像へと切り替わります。ジャパンカップ当日は、直線でバーチャル映像を使用するため、4コーナーカメラのあとは「1カメ」ではなく、「バーチャルカメラ」に切り替わります。
4コーナーカメラ
4コーナーカメラJC
ターフカメラ
場所:フジビュースタンド8階
ターフビジョンでは、横長のビジョンの形を生かして、横幅が通常の2倍、あるいは3倍の映像を映すことがあります。その横長の映像を撮影する専用カメラです。
ターフカメラ
ターフカメラJC
Interview
「映像でお客さまが盛り上がってくれると、心からうれしくなります」
by 映像システム課 ターフビジョン担当

東京競馬場のマルチターフビジョンの特徴は、なんといっても通常のモニター画面(16:9の比率)を横に3面並べた、そのサイズ(高さ11.2メートル、幅66.4メートル)です。3面のマルチターフビジョンは現在、東京と京都にあります。中山や阪神は2面、他は1面のターフビジョンとなっています。

インタビュー風景その2

東京競馬場のマルチターフビジョンは、2006年の秋、世界最大級のハイビジョン映像装置ということで新たに設置されたものです。3面をつなげた横長(最大48:9)の映像を映すこともできますし、3面それぞれ別々の映像を映したり、2面+1面にしたりすることもできます。

ターフカメラは32:9の比率、2面のサイズで撮ることを専門とするカメラで、レース中のターフビジョンでは、このカメラの映像がライブで映されています。
じつはこの映像は当社が運営している「JRAレーシングビュアー」のマルチカメラ機能で見ることができるんですよ。こういう二次利用は、PRCならではの強みだなと思います。

10万人を超える観衆が見るターフビジョンを自分が仕切っていると思うと緊張もしますが、大きなマルチ画面で放映したコンテンツでお客さまが盛り上がってくれると、心からうれしくなります。競馬の運営に関わる一員として、力になれたな、と思う瞬間です。

ターフビジョンのディレクションを行う
レースの放映
レースを盛り上げるカメラ
1コーナーカメラ
場所:1コーナーの外側
直線の攻防を正面から撮影します。レースでは、ゴール後に勝ち馬のアップを正面から撮影します。
1コーナーカメラ
1コーナーカメラJC
ゴール前下カメラ
場所:ゴール直前の芝コース外ラチの下
低いアングルからゴールの瞬間の勝ち馬を狙います。距離が近く、迫力のある映像が撮影できます。ライブでは使用されず、レース後のリプレイなどで使われます。
ゴール前下カメラ
ゴール前下カメラJC
スーパースローカメラ
場所:ゴール前の芝コース外ラチ添い
ゴール前、外ラチのすぐ外側に設置され、ゴールの瞬間を、専用の機器を使用してスーパースローで再生するための特殊なカメラです。ライブでは使用されず、レース後のリプレイなどで使われます。
スーパースローカメラ
スーパースローカメラJC
馬場内インサイドカメラ
場所:スタンド前の障害コースの脇
ゴール前を、馬場の内側から「3カメ」よりゴールに近い位置で撮影します。映像はライブではほぼ使われませんが、リプレイやハイライトVTRなどで使用されます。普段は設置されておらず、ジャパンカップ前日の最終レース終了後に足場を組んで設置されます。発走前に、ゲストプレゼンターなどがお客さまに手を振る映像も、このカメラが撮影することがあります。
馬場内インサイドカメラ
馬場内インサイドカメラJC
これらのカメラで撮影された
「2018 ジャパンカップ JRAオフィシャル映像」
を見る!
Point!
カメラは最低何台必要?

最低限のセットは「1カメ(レース全般)」、「2カメ(ゴール前など)」、「3カメ(馬群全体など)」、「第1パドックカメラ」、「第2パドックカメラ」の、合計5台になります。ローカル開催などはこのセットで行われることもあります。

ポイント(カメラは何台必要)
ジャパンカップを終えて……
ターフビジョン担当

今年、ジャパンカップの発走直前にターフビジョンで放映したオリジナル映像は、実は納品されたのが当日の朝でした。というのも、その映像の中に、前日の土曜日に撮影した外国馬関係者のバスツアーの様子を入れたからです。

この映像は3面のマルチターフビジョンをぶち抜き(48:9)で使うもので、(レース当日の納品だったため)放映テストはできずにぶっつけ本番になることも覚悟していました。しかし、なんとか開門2分前にテストを終えることができました。これには心底ホッとしました。

こうしたものは、通常金曜日までには完成していて、遅くとも放映前日までにはテストができています。でも今回はどうしてもフレッシュな内容のものをお客さまに見ていただきたくて、このようなスケジュールになりました。無事に放映できたのも、関係各所の協力があったからこそで、心から感謝しています。

ジャパンカップ発走前のターフビジョンオリジナル映像
緊迫感が漂うターフビジョン操作室
ジャパンカップを終えて……
バーチャル映像担当

今年のジャパンカップのバーチャル映像は、特に準備が大変なものになりました。通常なら少なくとも1か月前から制作を始めるのですが、この秋はジャパンカップの3週前に京都でJBC競走が行われて、そこでもバーチャル映像を使用したからです。

制作と準備を並行して進めることは難しいため、結果的にジャパンカップのバーチャル映像は、非常にタイトなスケジュールで制作しました。何か月も前から作れればいいのでしょうが、出走馬が決まらないと制作に入れない演出もあるので、なかなかそうもいきません。

ただ、当日の放映はとてもうまくいきました。一つだけ心残りがあるとしたら、有馬記念ファン投票の中間発表を、馬を芝コースに立体的に出現させる演出で第6レースの馬場入場後に放映する予定だったのが、全国的に放映することができなかったことです。理由は、そのレースの入場後に放馬があったからでした。

バーチャル映像は事前に準備したものを使い、関係各所と綿密な連携を取って流すものなので、こうした不測の事態への対応は確かに難しい面はあります。だからこそ現場での判断を的確に下して、少しでもスムーズに放映したかったところ。こうした経験を生かして、次はもっと良いものを見ていただけるようにしていきたいですね。

有馬記念 ファン投票中間発表のバーチャル演出
ジャパンカップを振り返る二人
  • 当コンテンツの内容は、2018年ジャパンカップ時点でのものです。
  • 各カメラの呼称は当社での呼び名で、JRAが公式に認めるものではありません。