今月の立ち読み

アーモンドアイ引退特集

アーモンドアイ引退特集
ノンフィクション
競走馬 アーモンドアイとは―
4人の男たちが語る素顔
文 = 有吉正徳

今月の立ち読み

ジャパンカップでGⅠ9勝めを挙げ、引退レースを飾ったアーモンドアイ。
その華々しい競走馬生活の舞台裏にはどのような物語があったのか。
携わった4人の男たちの証言のもと、その実像に迫る。


 夕闇迫る中山競馬場のパドックにアーモンドアイが現れた。2020年12月19日、最終レース終了後、引退式は静かに始まった。

 新型コロナウイルスの影響で入場制限が行われていた。それでも約1700人のファンが最後の姿を見ようと、寒い中、遅くまで居残り、パドックを囲んだ。レース前には、やる気を前面に出すこともあったアーモンドアイだが、この日は引退式だと知っているのか、おとなしくパドックを周回した。

 C.ルメール騎手は引退式のためにしたためた手紙を朗読した。馬主である㈲シルクレーシングの米本昌史代表は「メルシー、アーモンドアイ」と感謝の言葉であいさつを締めくくった。

 満場の拍手を背にアーモンドアイはパドックから退場した。2017年8月6日、新潟競馬場でデビューした名馬は3年3カ月あまりの現役生活を終え、ファンに別れを告げた。

 海外を含め15戦で芝のGⅠ9勝、国内のGⅠ8勝、獲得賞金19億1526万3900円と数々の歴代最高記録を塗り替え、競馬界に数々の衝撃を残した。アーモンドアイとはどんな競走馬だったのか、どんな足跡を残したのか。関係者の証言でその実像に迫りたい。


信じられないタイムで走り
周囲を驚かせた抜群の脚力

 アーモンドアイを語る上で、一番に注目しなければならないのは抜群の脚力だ。「競馬は時計じゃない」「シンザンは一度もレコード勝ちしたことがない」という。それも一面の真実だ。アーモンドアイはしばしば信じられないようなタイムで走り、みんなを驚かせた。大げさにいえば、サラブレッドの可能性を広げてみせた。

 18年の桜花賞では阪神競馬場の芝1600㍍を1分33秒1で駆け抜けた。翌年グランアレグリアに更新されることになるが、これは厩舎の先輩アパパネが10年にマークした1分33秒3を8年ぶりに塗り替える当時の桜花賞レコードだった。

 また桜花賞が1馬身3/4、オークスが2馬身、秋華賞が1馬身半。牝馬三冠で2着馬につけた着差はすべて1馬身以上だった。三つのレースをいずれも1馬身差以上の着差で制したのは、20年のデアリングタクトを含め牝馬三冠の6頭の中でアーモンドアイだけだ。ずば抜けた脚力の証明だ。

 アーモンドアイの代名詞ともいえるのが、18年のジャパンCだ。優勝タイムの芝2400㍍2分20秒6は従来の記録を一気に1秒5も短縮するスーパーレコードとなった。ジャパンCのレースレコードは常に外国馬が記録してきた。第1回だった1981年のメアジードーツ(米)を含め、86年のジュピターアイランド(英)、87年のルグロリュー(仏)、89年のホーリックス(NZ)、05年のアルカセット(英)。アーモンドアイはジャパンCが始まって38年目にして初めてレースレコードをマークした日本馬になった。


天賦の才能を持った本馬を
舞台裏で支え続けた男たち

 トップスピードに乗ると、四肢をいっぱいに伸ばして走るフォームは美しく、騎乗者の感覚を狂わせた。

 厩舎にいる間、身の回りの世話をし、調教で手綱を取った根岸真彦調教助手はいう。「自分ではゆったりと走らせているつもりでも時計を見ると思っていたより速い、ということがよくありましたね。ストライドが大きいのでスピード感が違うんです」


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