今月の立ち読み

未来に語り継ぎたい名馬物語(55)

未来に語り継ぎたい名馬物語(55)
二度頂点を極めたダート王者
不屈のカネヒキリ
文 = 斎藤修

今月の立ち読み

若くしてダート王に輝きながら“不治の病”とも言われる屈腱炎を発症。
雌伏の時を経て奇跡の復活を果たし、8歳まで戦い続けた。
その波乱の競走馬生活を今一度辿る。


 2015年に発表された、『未来に語り継ぎたい名馬BEST100』の投票で、ダートでの活躍が評価されたと思われる馬は次のとおり。
 19位 クロフネ
 32位 ホクトベガ
 55位 カネヒキリ
 70位 メイセイオペラ
 86位 ヴァーミリアン
 91位 エスポワールシチー

 地方所属のメイセイオペラを別とすれば、いずれもデビュー当初は芝を使われていた馬たち。ホクトベガこそデビューから3戦はダートだったが、4歳までの重賞3勝はいずれも芝だった。

 ところがごく近年のダート・チャンピオン級の馬たちはまったく異なる。14年以降のJRA賞・最優秀ダートホースを順に並べてみると、ホッコータルマエ、コパノリッキー、サウンドトゥルー、ゴールドドリーム、ルヴァンスレーヴ、クリソベリル。1頭の例外もなくデビューから一貫してダートのみを走っている。

 日本のダート、というより中央競馬のダートの歴史はまだ新しい。

 中央・地方間で交流が広がったのが95年のことで、フェブラリーSが中央競馬で初めてのダートGⅠとして格上げされたのが97年。その頃をダートの黎明期とするなら、カネヒキリが活躍したのは、ダート競馬がいよいよ充実期を迎えようかという時期。同期にはヴァーミリアン、サンライズバッカスがいて、3歳下にエスポワールシチー、スマートファルコン、サクセスブロッケン、カジノドライヴ。この頃、船橋の名門・川島正行厩舎にはアジュディミツオー、フリオーソがいた。ダートGⅠ(JpnⅠも含む)のタイトルを巡って群雄が割拠する時代だった。

主戦も出自も無敗も同じ
“ダートのディープ”として注目

 2歳時に芝を2戦して勝てなかったカネヒキリだが、3歳になってダートで未勝利戦、3歳500万下をともに圧勝で連勝。そこで芝の毎日杯に挑戦するが7着と結果は出なかった。再びダートに戻った端午S(当時は京都ダート1800㍍)では2着に9馬身差の圧勝。これで進むべき道が決まった。

 断然人気で迎えたユニコーンSは、芝のスタートでやや後手を踏んだものの、直線では軽く気合をつけられただけで抜け出した。のちに短距離のダート交流重賞で6勝を挙げるアグネスジェダイに1馬身3/4差だが、着差以上の楽勝だった。

 時は、ディープインパクトが無敗のまま日本ダービーを制した翌週。ともに鞍上は武豊騎手で、勝負服も同じ。単勝の払い戻しも同じ110円。ダートに限れば無敗ということでは“ダートのディープ”として、より注目度が高まった。

 オーナーが金子真人氏(のち金子真人ホールディングス)ということでは、その出自からして共通している。ノーザンファームの生産で、02年セレクトセール当歳で取引された。ディープインパクトは7350万円(税込)、カネヒキリは2100万円(同)。例年、億超えの落札が何頭もあるセレクトセールにあっては、注目度はそれほど高くないところから現れた、芝・ダートそれぞれの世代最強馬でもあった。


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