今月の立ち読み

未来に語り継ぎたい名馬物語(66)

未来に語り継ぎたい名馬物語(66)
39年ぶり牝馬の宝塚記念制覇
スイープトウショウに寄り添いて
文 = 勝木淳

今月の立ち読み

2歳時から世代屈指の脚力を誇り、秋華賞で念願のGⅠ初制覇。古馬となり並みいる強豪を退けてドリームレースに勝利した、気まぐれ女王の姿を辿る。


 池添謙一と角田晃一。大一番に強い勝負師として知られる二人の名手のリレーによってスイープトウショウは全24戦を戦った。とりわけ池添は3歳春から3年8カ月、苦楽をともにした。それは文字通りだったにちがいない。ゲートを嫌がり、馬場入りも拒否、調教すら容易にさせてもらえない。GⅠ3勝のスイープトウショウはほかに類を見ない気難しい名馬だったからだ。スイープトウショウの鉄のような意志に根気強く付き合った池添の存在がなければ、GⅠ3勝の栄光はなかっただろう。

 とりわけ2005年宝塚記念は、当時39年ぶり史上2頭目の牝馬の優勝という偉業だった。馬場の真ん中を豪快に攻めあがり、強力牡馬陣を一掃する美しい女王の走りは、いまも鮮明に記憶に残る。

分岐点にあったトウショウ牧場
復活への希望を託される

 スイープトウショウは2001年5月9日、名門トウショウ牧場で生まれた。スイープトウショウが生まれた当時、トウショウボーイやシスタートウショウなど数多くの名馬を輩出した名門牧場は分岐点にあった。日本競馬に変革をもたらしたサンデーサイレンスや外国産馬の勢いに押され、オーナーブリーダーとして活躍馬を出せない歯がゆさをかみしめていたのだ。それを拭い去るため、自家繁殖牝馬への交配相手を見直し、土壌改良や育成施設の整備、水源に至るまで徹底した投資を実行。その結果、牧場伝統のソシアルバターフライの血を引くシーイズトウショウ(03年桜花賞2着)があらわれた。

 その翌年、チャイナトウショウの系統タバサトウショウに国内供用初年度だったエンドスウィープが交配され生まれたスイープトウショウは、まさに名門牧場復活への希望だった。

 その希望を託した調教師は翌年2月に定年を控える渡辺栄。クラシックシーズンに転厩を迎えるものの、母タバサトウショウ、母の母サマンサトウショウも管理、この血統を知り尽くしているゆえの選択だった。主戦は渡辺栄の弟子である角田晃一。初陣は2歳秋の京都、牝馬限定の芝1400㍍新馬戦だった。

 ゲートをゆっくり出たスイープトウショウは3、4コーナーで馬群の大外を馬なりで押し上げ、直線入り口で先行集団に並び、気合をつけられると、2着アグネスラズベリをあっという間に置き去りにした。騎乗した角田もここではものが違うとコメント。さらなる高みを目指せる手応えを感じた。

 その期待を確信に変えるべく選ばれた次走は重賞のファンタジーS。1番人気は野路菊Sを勝ったツルマルシスターに譲ったものの、新馬戦同様にスタートで遅れたスイープトウショウは前半をじっくりと進め、馬群の大外を自ら進出、最後は末脚一閃、余裕を持ってゴール板を先頭で駆け抜けた。角田もレース後、前半で折り合いを欠いたにもかかわらず、繰り出した末脚に自信を深めた。ただ、返し馬を嫌がり、精神的な課題が残るともコメントした。これこそがのちにスイープトウショウの最大の課題、我の強さにつながる。

 そして主役として迎えたGⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ。課題だったゲートこそクリアしたが、最後の直線で勝ったヤマニンシュクルに進路をカットされ、5着。デビュー以来、初黒星を喫した。

転厩を機に手綱を取った池添
試練を糧に大胆な策

 3歳クラシックシーズンは冬の紅梅Sを勝利で飾り、幸先よくスタートを切ったのち、2月で引退する渡辺栄から一歳年上のシーイズトウショウを管理する鶴留明雄に引き継がれた。転厩初戦はトライアルのチューリップ賞。騎手も角田から鶴留の愛弟子である池添謙一に変更された。クラシック有力候補の転厩初戦というプレッシャーのなか、レース後に結果を出すつもりで乗ったと振り返った池添は、見事にスイープトウショウの末脚を引き出し、その重圧に打ち勝った。


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