ページの先頭です

今月の立ち読み

未来に語り継ぎたい名馬物語

「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」の上位馬を1頭ずつ紹介する当連載の28回目は、日本競馬史上最強のスプリンターとも評されたロードカナロア。国内で3つ、香港で2つのスプリントGⅠを勝利、さらにマイルの安田記念も制した、短距離界の絶対王者だ。

 距離は凱旋門賞の半分の1200m。しかし、日本馬にとっては凱旋門賞よりもはるか遠くにゴールがあると思われていたレースがある。

 香港スプリントだ。

 日本馬として史上初めて、そして現在のところ唯一このレースを優勝した馬がいる。それも2連覇してみせた。

 それがロードカナロアだ。

 彼のラストランとなった2013年の香港スプリント。このレースに、彼が日本の競馬界に残した“モノ”の全てが集約されていたのかもしれない。今回は、そのレースぶりとそこへ続くまでの彼の道程を改めて振り返ってみたい。

安田隆行厩舎の快速馬2頭が
GⅠレースで王座を争った

 2010年12月、小倉競馬、芝1200mの新馬戦でロードカナロアはデビューした。後に大出世する馬らしく短距離戦にも関わらず2着に6馬身の差をつけてスピードの違いをみせつけた。しかし、当時はまだ本格化する前。2戦目のジュニアC、3戦目の500万条件をいずれも2着に敗れてしまう。敗れた2戦は1600mと1400mではあったが、後に安田記念も勝利する馬であることを考慮すれば、やはり本格化前だったとみるのが正しいだろう。

 その後、1200mに路線を戻すと、京阪杯やシルクロードSといった重賞を含む5連勝。ふらふらしながらも楽々と突き抜けたシルクロードSの勝ちっぷりは圧巻で、続くGⅠ・高松宮記念でも1番人気に支持されるまでになった。

 しかし、このGⅠを制したのは前年のスプリンターズSの覇者で、同じ安田隆行厩舎の馬であるカレンチャンだった。

 その頃、安田隆行厩舎で調教助手をしていたのは調教師の子息で、現在は自身も調教師となった安田翔伍。当時、次のように語っていた。

「カナロアはまだ競馬を教えている段階という感じ。とはいえ複雑な心境ですね。まぁ、カレンチャンが勝ったから良しとしますか……」

 ところが安田翔伍は半年後にもっと複雑な気分となる。

 函館スプリントSとセントウルSを共に2着に敗れたロードカナロアは、続くスプリンターズSで2番人気となった。今度の1番人気はカレンチャンだ。

 手綱をとるのはセントウルSから鞍上を任され、これがコンビ2戦目となる岩田康誠。彼が見事な騎乗でロードカナロアをいざなった。徹底的にカレンチャンをマークすると、直線、外から僚友の女王をかわし、1分6秒7のレコードタイムで新チャンピオンへと導いたのだ。

「セントウルSは休み明けでもあったし、僕自身もロードカナロアには初騎乗ということで2着に負けてしまいました。でも、良い馬であることは分かったし、ひと叩きされた後のここなら充分やれる手応えは掴んでいました」

 岩田はそう語って喜びを表した。

 一方、安田翔伍は次のように語った。

「カレンチャンは前年のスプリンターズS、この春の高松宮記念と連勝していましたからね。彼女の日本におけるスプリントGⅠ3連勝を阻む形になってしまったので本当に複雑な気持ちになり、ただただ号泣してしまいました」

 ついにロードカナロアはGⅠホースとなった。しかし、彼にとってはこの頂でさえ、まだ道半ばだったのである。


(続きは、9月25日発売の『優駿』10月号でお読みください。)

バックナンバー

2017年: 9月号   8月号   7月号  

2017年: 6月号   5月号   4月号   3月号   2月号   1月号  

2016年: 12月号   11月号   10月号   9月号   8月号   7月号  

2016年: 6月号   5月号   4月号   3月号   2月号   1月号  

2015年: 12月号   11月号   10月号   9月号   8月号   7月号  

2015年: 6月号   5月号   4月号   3月号   2月号   1月号  

2014年: 12月号   11月号   10月号   9月号   8月号   7月号  

2014年: 6月号   5月号   4月号   3月号   1月号  

ご購入はこちら

ページ上部へ