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今月の立ち読み

未来に語り継ぎたい名馬物語

「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」の上位馬を1頭ずつ紹介する当連載の26回目は芦毛の怪物と謳われたゴールドシップ。2歳夏にデビューしてから6歳いっぱいまで走り続け、28戦13勝、うちGI6勝という素晴らしい成績を収め、ファンに愛された名馬だ。

“もしも”の話をする。

 ゴールドシップがもし喋るとすれば、何弁を使うだろうか。生まれ故郷の北海道弁か、長く暮らした関西弁か、それとも一流のスターらしく標準語なのか。

 競馬マンガの原作に携わった当時を思い出しながら、そんなことを思った。あの頃の自分は「馬には絶対喋らせない」と心に決めて、ストーリー作りに臨んだものだ。なぜか。競馬がこんなにも長く深く、世界中で愛される理由を考えてみれば、最大の要因は「馬が喋れない」ところにある。自らの思いを言葉にできないからこそ、ホースマンは皆、懸命に馬の気持ちを推し量り、最高の状態に持っていくよう努力する。ファンもまた、言葉を持たない馬の立場に立ってあれこれ思い悩み、馬券を買い求める。

 もちろん、すべては推測の域を出ないのだ。ただ、だからこそ競馬の魅力は尽きない。馬を喋らせるとはすなわち、そうした魅力の根本との間に矛盾をきたしはしないか……と考えていたのである。

 今回、ゴールドシップの軌跡を振り返りながら、どうしてなのだろう、「こいつに喋らせてみたい」の気持ちが膨らんでいった。圧巻の走りを見せたかと思えば凡走する。時に立ち上がり、時にゲートで出遅れながらも、長く懸命に走り続けて、見る者を強く励ました。単に気が荒いというのではない。人間くささをどこかに持った馬だ。だからこそ人気を集めた彼の、ある時、こんな声を聞いたように思ったのだった。

 ――破天荒と言われたオレが主人公なんやで。普通に書いてもおもろないわ。変化球を選んだらどや?

 うん、それがいいかもしれない。

 ならば語ってもらおうではないか。

 競走馬としての黄金の軌跡と背景とを、主人公自らの言葉で。


(続きは、7月25日発売の『優駿』8月号でお読みください。)

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