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今月の立ち読み

引退特別企画

 ジェンティルドンナが勝ちまくっていた2012年、私はオルフェーヴルに夢中だった。前年四冠を制したオルフェーヴルはこの年の初戦となる阪神大賞典で、1.1倍の圧倒的1番人気を背負いながら2周目の3コーナーで大きく外に逸走し失速。後方3番手まで下がりながら再び走り直したものの半馬身差の2着に敗れ、続く天皇賞も11着と惨敗していた。

 堕ちた英雄の心中を察するあまり超ブルーだった春、ジェンティルドンナは桜花賞を制し、続くオークスも圧勝。二冠を遂げていた。ライバルはヴィルシーナ。ヴィルシーナとの対決は秋華賞まで続いた。しかしここでもジェンティルドンナが勝利。牝馬三冠を達成する。3レースとも2着はヴィルシーナだった。

 たしかに牝馬三冠は偉業である。スポーツ新聞にはブチ抜きで「三冠達成」の大見出しが躍った。父ディープインパクトが三冠馬。三冠馬から三冠馬が生まれたのは史上初だったからだ。だが、それまで牝馬三冠を制したメジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネの三頭は、牡馬と互角にわたり合えなかったことを私たちは知っていた。だからその時点で、ジェンティルドンナが競馬史を塗り替える名牝中の名牝になるなどとは私はみじんも思っていなかった。完璧に彼女の実力を読み違えていたのだ。

 それよりオルフェーヴルだった。宝塚記念で春の天皇賞の汚名を返上したオルフェーヴルはフランスに渡り、フォア賞を制し、凱旋門賞でため息が出るしかないパフォーマンスを見せていた。直線で独走しこんなに簡単に勝ってしまっていいのかとみんなが至福の時を味わっていたゴール前で、オルフェーヴルはなぜかささって内ラチにぶつかり、追い込んできたソレミアにクビ差で敗れたのである。この一戦こそ、ジェンティルドンナが語り継ぎたい名馬に名を連ねるための必須条件となる。


(続きは、3月25日発売の『優駿』4月号でお読みください。)

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