ページの先頭です

今月の立ち読み

引退特別企画

 年の瀬の中山競馬場は夕方4時半に早くも日没を迎える。有馬記念後に行われる引退式はいつも夕闇の中。ゴールドシップのさよならセレモニーもそうだった。無数のカクテルライトに照らされたターフを、すっかり白くなったスターホースが歩く。全レース終了後も約4万人が残ったスタンドからは、しきりに「ありがとう」と声が飛んだ。

 こんな時でもゴールドシップは素直ではなかった。何度もいななき、写真撮影の輪の中に入るのをしばらく拒否。寒風が吹く中を待たされていた関係者やファンは、そんな時も温かい笑顔でゴールドシップを見つめていた。

ゴールドシップは王様
そして力でねじ伏せる王者

 なにをしても許してもらえる。

 引退式での一シーンのように、競走生活晩年のこの馬にはそんな「人徳」のようなものがあった。

 豪快なレースぶりで天皇賞・春を快勝し、単勝1.9倍の圧倒的1番人気で迎えた15年の宝塚記念。ゲートオープンの瞬間、大きく立ち上がり致命的な出遅れを負った。見せ場すら作れないまま15着に大敗。レース後、横山典弘騎手は「馬券を買ってもらった人には申し訳ない」とした上で「(敗因は)馬に聞かなきゃ分からない。これも込みで、この馬の個性だと思って応援してもらえたら」と語った。後日、須貝尚介厩舎には「これからも頑張れ」といった励ましの手紙が届いたという。

「ゴールドシップならば仕方がない」

 そのように寛容な目で見ていたファンは多かったのだろう。

 ゴールドシップはいつも王様だった。少なくとも“本人”はそう思っていた。若駒の頃から気性の激しい馬として知られていた。新馬戦に出走するために入厩した函館競馬場では、他馬を蹴りにいくことで有名で、調教時は立ち上がったり馬場に入らなかったりと、散々スタッフをてこずらせた。それが「若気のいたり」でなかったことは、引退するまでそんな態度が変わらなかったことで分かる。

「年をとって変わったのは、体が白くなったことだけ。去年でも、厩舎回りを運動する時はまったく気を抜けなかった。後ろから馬が来るのが嫌いで、そんな気配があると、じっと立ち止まって待って『一発蹴ってやろうかな』という雰囲気になった」。足掛け5年、連れ添った今浪隆利厩務員が柔らかな笑顔で振り返る。


(続きは、1月25日発売の『優駿』2月号でお読みください。)

ページ上部へ