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今月の立ち読み

未来に語り継ぎたい名馬物語

「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」。こうしたアンケートに触れるたび、僕たちは、その馬から受け取った感動を元に評価を下す。少なくとも、僕個人はそのようにしている。

 ここに言う感動とは何か。

 それはたぶん、心に生じた「振幅の大きさ」なのだろうと思う。オグリキャップしかり、トウカイテイオーしかり、強いとわかってはいても、いろんな要因によって応援する者はハラハラさせられた。そして、尊敬できる名馬とは、そのハラハラをどこかで必ず勝利の喜びに変えてくれた。劇的に。だからこそ僕たちは深い感動に浸ることができたのである。

 こうした「与える振幅の大きな馬」は、時を経ても評価を下げない。振れ幅が大きければ大きいほど、当時の心境へと、誰もがすぐに戻ることができるからだ。だから今回、1994年の引退から早20年が過ぎての評価だったにもかかわらず、トウカイテイオーは第8位に選出された。色あせない魅力の持ち主であると、その順位は何よりはっきり証明してみせた。

 父に続く、無敗での二冠制覇。

 ダービーにおける3馬身差での圧勝。

 通算12戦9勝、GI 4勝という戦績。

 現役中、4度にも及ぶ故障。

 有馬記念での敗戦。

 そして364日ぶりの劇的な復活。

 テイオーの軌跡をあらためて振り返る中、何を中心に置いて書くかはずいぶん迷った。競走生活を振り返るだけなら、似た文章はいくつもある。あらためて同じ話を繰り返す必要はない。

 だから、こんなふうに考えてみたのだ。

 トウカイテイオーが僕たちに、比類なき感動を与えてくれたのは間違いない。繰り返すが、その感動は、僕らの味わった「振幅の大きさ」に由来する。テイオーが、応援する者にどうして大きな振幅をもたらしたかといえば、一つには故障の多さを指摘できる。もうダメなのか。僕たちは何度もそう思わされたのだった。

 一方で、ラストランになった有馬記念を1年ぶりで勝ったように、不屈の闘志としか表現のできない「何か」をテイオーは持っていた。だからさらに振幅は増大した。なぜああもいきなり激走できたのか。背景には何があったのだろうか。

 1993年の有馬記念で、僕たちは確かに奇跡を目撃した。あの日の奇跡を形成した要因を、今さらながらではあっても考えてみようと思う。


(続きは、9月25日発売の『優駿』10月号でお読みください。)

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