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今月の立ち読み

不滅のライバル物語

Prologue
対決までの蹄跡


トウショウボーイ

関東のファンが期待を託したスケールの大きな走り

 デビュー前から話題の馬だった。

 血統は文句なかった。父はキタノカチドキ(74年皐月賞、菊花賞)、テスコガビー(75年二冠牝馬)とおなじテスコボーイ。姉のソシアルトウショウはオークスでテスコガビーの2着に頑張った馬である。

 馬体もすばらしかった。見た人はまず、小さな顔と大きな目にひきつけられ、なによりも雄大で柔らかな体に驚いた。

 加えて調教の動きが抜群だった。

 一方で難点もあった。腰が弱く、そのためにデビューは3歳の1月31日になった。それでも新馬戦を3馬身差で逃げきるのだが、このレースはやがて「伝説」として語り継がれる。4着は菊花賞馬グリーングラス。途中まで一緒に逃げて5着に粘った牝馬は、三冠馬ミスターシービーの母となるシービークインだった。

 トウショウボーイはその後、つくし賞を4馬身差、れんげ賞を5馬身差と、相手が強くなるほど楽に勝っていく。

 76年のクラシックは関東ではクライムカイザー(京成杯、弥生賞)やボールドシンボリ(朝日杯3歳S)が有力視されていたが、無敗の関西馬テンポイントが相手では分が悪かった。そんなときに登場したのがスケールの大きな走りのトウショウボーイだった。関東のファンの期待は重賞経験のない馬の可能性に託される。


テンポイント

デビュー戦から圧勝を繰り返した「関西の期待」

 物語のなかに生まれた馬だった。

 馬伝染性貧血症の疑似感染と診断されて殺処分の命を受けた祖母のクモワカは、研究馬として生きながらえ、長い裁判の末にサラブレッドとして復権した。その娘ワカクモは母が2着に負けた桜花賞に勝った。死んだはずの馬の血は名血となり、テンポイントに受け継がれた。

「流星の貴公子」と賞されたテンポイントは見た目にきれいな馬だった。黄金色に輝く栗毛。涼しげな目元。額から鼻筋にかけて流れる形のいい〝流星〟。胴長のスリムな体型は品のよさを醸しだす。

 2歳夏の函館のデビュー戦を10馬身差で勝ったテンポイントは、京都のもみじ賞を9馬身差で、さらに阪神3歳Sも7馬身差で独走する。

「見てくれ、この脚。これが関西の期待、テンポイントだ!」

 杉本清さんの実況が関東にも轟いた。

 3歳早々に東京競馬場に移動したテンポイントは東京4歳SとスプリングSを連勝する。これで5戦5勝。押しも押されもしないクラシックの主役となったが、関東での2戦は半馬身差とクビ差。予想外の接戦となった。

「これならトウショウボーイのほうが強い」

 皐月賞が近づくにつれて、関東ではそんな声も多くなっていた。


※馬齢はレース名を除き現在の表記(満年齢)
(続きは、12月20日発売の『優駿』1月号でお読みください。)

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