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今月の立ち読み

不滅のライバル物語

Prologue
対決までの蹄跡


グラスワンダー

早くから圧倒的な実力を見せつけるも、順調さを欠く

 のちに「史上最強」と呼ばれることになる95年生まれの世代。その中で最初に頭角を現したのが、1歳秋に米キーンランドのセプテンバーセールで25万ドルで購入された、この栗毛の外国産馬だった。レコードで圧勝した朝日杯3歳(現フューチュリティ)Sをハイライトに、2歳時は文字通りぶっちぎりの連続だった。

 3歳時は骨折で春を棒に振り、まだ本調子に遠い状態で迎えた毎日王冠では1歳上のサイレンススズカ、同世代のエルコンドルパサーの後塵を拝する。続くアルゼンチン共和国杯も大敗。しかし有馬記念で復活劇を演じ、ファンはあらためて「怪物」の力に驚愕した。

 そして迎えた4歳シーズン。骨膜の不安で中山記念を、目の下の外傷で大阪杯を回避し、始動は京王杯スプリングCに。有馬記念馬が1400mのGIIを別次元の末脚で差しきる姿は、やはり競馬のセオリーの埒外にあった。続く安田記念はエアジハードに惜敗。のちに骨膜炎の痛みが左回りでの走りをスポイルしていた可能性が指摘されるが、当時は「2走ボケ」としか説明しようのない敗戦だった。

 能力は底が知れない。でもどこか順調さを欠きがち。そんな怪物の歩む道が、ついに同世代のダービー馬、スペシャルウィークと交わる瞬間が迫っていた。


スペシャルウィーク

最強世代のダービー馬として、誰もが納得がいく走り

 すでに絶対的な存在となっていた種牡馬サンデーサイレンスに、重厚なスタミナを伝える日本古来の牝系の組み合わせ。外国産馬がクラシックに出走できない時代、世代の中心としてシーンを引っ張ったのは、武豊が跨るこの馬だった。

 当面のライバルはグラスワンダー、エルコンドルパサーらの外国産馬ではなく、セイウンスカイとキングヘイローだった。弥生賞を勝ち、皐月賞3着。ダービーは5馬身差圧勝。秋初戦の京都新聞杯も制したが、菊花賞は2着。そんなクラシック戦線を終えて出走したジャパンCは、初対決の同世代エルコンドルパサーの3着。出走せずに翌年に備えた有馬記念でやはり同世代のグラスワンダーが勝つと、世間は「最強世代」だと騒ぎ始めた。

 明けて4歳。アメリカJCCを圧勝し、阪神大賞典で重馬場を克服すると、天皇賞・春も危なげなく勝利。1歳上のメジロブライト、シルクジャスティスらを降したこの春の走りには、やはりさすが最強世代のダービー馬と、誰もが納得した。

 そして迎えた宝塚記念。安田記念2着を経てきたグラスワンダーとの初対決の、ちょうど1週間前。フランスではエルコンドルパサーがサンクルー大賞を勝って日本中を沸かせていた。最強世代の頂上対決は、そんな中で行われたのだった。


(続きは、6月25日発売の『優駿』7月号でお読みください。)

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