三冠を狙えると、
確信できる手ごたえ
瞬間の上に瞬間が積み重なって、1つの大きな流れは生まれ、大きな物語は作られる。
2004年秋、栗東トレーニング・センター。1頭の若駒に跨った武豊騎手は、その背中に他の馬とはまったく違うものを感じ取る。
翌年の3歳クラシックを十分に意識させる、いやそれどころか、三冠すべてを狙えると確信できるほどの手ごたえだった。
「これはヤバい」
馬の名はディープインパクト。無敗のまま皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制覇、日本の競馬史上6頭目となる“3歳クラシック三冠”を成し遂げる存在だ。偉業のスタートには、名手・武豊に大胆な確信を抱かせた瞬間があったわけである。
ほどなく、その確信はファンにも分け与えられることとなる。2004年12月19日、ディープインパクトが阪神競馬場・芝2000mで迎えた新馬戦。ディープインパクトは、飛び出すというよりも、むしろゆったりとした動作でゲートから出る。1000m通過66秒という遅いペースを4~5番手でゆったりと追走し、3コーナー過ぎからは外へ持ち出されてジワリと進出、直線入口では早くも先頭に並びかける。直線では鞍上・武豊騎手がムチを使う場面もなく、少し気合いをつけただけで他馬をみるみる引き離し、そして最後はサラリと流す。終始、張り詰めたところのない余裕たっぷりの走り。
2着に4馬身差の完勝デビュー。武騎手をして「文句のつけようがない」といわしめたのもうなずける勝利。たった一度の走りで、この馬に待つ輝かしき未来のすべてを予見できるようなレースだった。
そもそもディープインパクトの未来は、走る前から約束されていたのかも知れない。デビュー戦へと至るまでにディープインパクトは、名馬特有の「大いなる流れへとつながる瞬間」をいくつも積み重ねていたからだ。
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