歴史ある名牧場の
転換期に現れた1頭の牝馬
スイープトウショウが生まれたトウショウ牧場は、国内有数のオーナーブリーダーである。スイープトウショウのほかに桜花賞馬のシスタートウショウ、重賞5勝のヌエボトウショウなど多くのグレードレース勝ち馬を送り出してきた。しかし、トウショウ牧場といえば、なんといってもトウショウボーイである。デビューから約34年たったいまも、トウショウボーイの名前とその華やかで豪快なレースぶりは畏敬の念を持って語り伝えられている。アーガイルチェックに紫袖のトウショウの勝負服を見ると、多少成績が悪くてもほかの馬よりもよく走るように見えてしまうのは、トウショウボーイの記憶がどこかに刷り込まれているせいだろう。
偉大なトウショウボーイは牧場の誇りである。しかし、その血が牧場の足かせになった時期もある。
トウショウボーイの母ソシアルバターフライはその血を受け継ぐ多くの活躍馬を送り出して一大ファミリーを築いた。しかし、次第に活躍馬も減り、GIタイトルからは遠ざかるようになった。名門牧場が、それを支えてきた有力な牝系に固執した末に没落する。生産界ではよくある話である。トウショウ牧場もそうした危機に襲われかけた。
そこで藤田正明オーナーから跡を継いだ衛成オーナー、志村吉男場長といった人たちは新しい血の発掘を心がけるようになる。それまでは有力種牡馬を、まずソシアルバターフライの系統に種付けしていたのを、ほかの系統にも満遍なく振り分けるようにしたのだ。そんなことができるのも、トウショウ牧場にはほかに、有力な牝系が豊富だったからだ。
その結果、シラオキ系からはシスタートウショウ、ビバドンナ系からはヌエボトウショウが出た。スイープトウショウが出たのはチャイナトウショウの系統である。
トウショウ牧場の中では主流といえない系統で、この血を入れる際には反対者も多かった。チャイナロックはハイセイコーなどを出した有力種牡馬だったが、大柄で、少し垢抜けないところがあり、牝馬の活躍馬の多いトウショウ牧場のスタッフからすると、やや「家風」に合っていない感じがあったのかもしれない。しかし、牝馬ながらダービーにまで出走したマーブルトウショウやその娘でエプソムカップを勝ったサマンサトウショウなど、徐々に活躍馬を送り出すようになった。
スイープトウショウはサマンサトウショウの娘、タバサトウショウの産駒である。父は日本供用初年度のエンドスウィープだった。種牡馬としての実績よりも、未知の可能性に期待したのだ。
スイープトウショウが誕生したころは、ちょうど牧場の施設面でも転換期だった。放牧地の土質改良が行われ、屋根つきの覆い馬場を作って、運動の質も変えた。成果があがるまでは時間がかかったが、それでも向上の兆しは見えていた。そんなころに現れたのがスイープトウショウだった。
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