必然的な流れともいえる
本番を見据えたコンビ結成
ダンスインザムードの3戦目は、桜花賞のステップレースであるフラワーC。鞍上はまたも替わって、武豊騎手。
実はこれ以前に、武騎手が藤沢厩舎の馬に騎乗した例は数えるほどしかない。重賞勝ちに限れば、スティンガーの京王杯スプリングCとシンボリクリスエスの青葉賞くらいだ。東と西という地理的条件はあるにしても、チャンピオントレーナーとトップジョッキーという“ありそう”なコンビは、意外なほど少なかった(藤沢調教師は冗談めかして「騎手の腕で勝てたといわれるのがしゃくだからユタカには頼まない」と語ったそうだが)。
また、この時点で武騎手には、エルフィンS1着、フィリーズレビュー2着のマルターズヒートという、桜花賞でも人気を集めそうなお手馬がいた。
ならば、前走に引き続きダンスインザムードの鞍上には岡部騎手、というのが筋だったかも知れない。だが、岡部騎手はまだ復帰から間もなく万全とは言い難かった。幾度となくリーディングトレーナーの座を獲得し、タイキシャトルやシンボリクリスエスなどで数多くのGIタイトルを勝ち取ってきた藤沢調教師だが、3歳クラシックは未勝利。ダンスインザムードという最大のチャンスに、鉄壁の布陣を用意したいと考えたのも当然だ。
短期免許を取得して来日する予定のケント・デザーモ騎手という案も浮かんだが、彼の主戦場アメリカもまたクラシックシーズン、参戦スケジュールは流動的だ。オーナーである社台レースホースも含め「レギュラーとして騎乗してくれる一流の騎手」を陣営としては望んでいて、そこで武騎手に白羽の矢が立てられた、というわけである。
武騎手としても、ダンスインザムードの姉ダンスパートナーとのコンビではオークスを、兄ダンスインザダークの手綱を握っては菊花賞を勝っており、姉兄に負けない輝きを早くも放っていた妹ダンスインザムードにも「いつかは乗ってみたい」と考えていたという。だから流れからいえば、ダンスインザムード陣営が武騎手を選び、武騎手がダンスインザムードを選んで中山へ向かったのも、何ら不思議ではなかったといえる。
こうして、2番人気フォトジェニーが単勝オッズ11.2倍、ダンスインザムードは1.2倍という抜けた評価で迎えることになった初コンビのフラワーC。雨中、重馬場でのこの一戦で、またもダンスインザムードは完璧なレースを披露した。
逃げるメイショウオスカルの2番手でスンナリと折り合う。そのままゆっくりとコーナーを回り切り、だが、まだ武騎手は追わない。ヤマニンアラバスタがマクるように上がってきたのを待って、残り200mでようやくスパート。1馬身1/4のリードを楽々と保ってゴールする。
誰もがダンスインザムードの能力に疑いを持ちようのない、そんな結果だった。
その後、美浦まで駆けつけて調教にまたがり、コンビネーションを醸成させるとともに「だんだん本気で走るようになっている」と、本番モードに移行したダンスインザムードの様子に自信を深めた武騎手。今度は自身がダンスインザムードの西下を待ち、そうして臨んだのが4月11日の第64回桜花賞だ。
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