ページの先頭です

今月の立ち読み

THE LEGEND OF HEROINES サラブレッド・ヒロイン列伝

牧場にもたらした
大きな財産

 ビリーヴの生まれ故郷は、名を上水牧場という。北海道の鵡川町(現むかわ町)に位置する。活躍した過去の生産馬には、83年の安田記念など重賞を3勝したキヨヒダカ(父ホープフリーオン)や、皐月賞3着など92年の春を賑わせたスタントマン(父スリルショー)がいる。

 牧場は以前、苫小牧の勇払原野にあった。場主の上水公が、72年、3頭の繁殖牝馬と共に鵡川町へと移り、あたりを開墾しながら敷地を広げていったのだ。今では80町歩の敷地面積を誇る。

 その苫小牧時代のつながりだろう、社台ファームの創始者・吉田善哉とのあいだに親交があった。そして、その付き合いは牧場に大きな財産をもたらした。サンデーサイレンスのシンジケート会員になったのだ。だから毎年1頭ずつ、牧場の牝馬にサンデーサイレンスを付けることができた。さらに息子の明は、交配相手となる繁殖牝馬を海外まで探しに出かけた。

 たまたまの縁、と書けば、関係者には失礼かもしれない。だが96年、サンデーサイレンスの配合相手をさらに探す中、馬を扱う商社から「繁殖を買わないか」と連絡が入った。その際に紹介された馬がグレートクリスティーヌだ。一目見て気に入った息子の明は、購入を即決した。

 グレートクリスティーヌはダンジグを父に持つ。また母系をさかのぼると良血であることがはっきりする。

 その母グレートレディエムは、米ダート7ハロンの重賞・ラブレアSなど14勝を記録した快足馬だった。また姉にはレディーズシークレットの名前が見える。レディーズシークレットは実に25勝をあげ、86年の米年度代表馬に輝いた。かの有名な米三冠馬・セクレタリアトの代表産駒としても名を馳せている。

 98年4月26日、グレートクリスティーヌは、父サンデーサイレンスの牝馬を出産した。

 授かった競走馬を、上水牧場ではセリに出すことが多かった。セリへの上場自体が牧場の宣伝に繋がる。そんな考えが強いのだ。グレートクリスティーヌの娘も例外ではなかった。生まれて間もなく当歳セリへの出場が決まった。ただ、その舞台は静内の北海道市場ではなく、この年まさに第1回を迎えたセレクトセールだった。

 社台グループの生産馬が数多く上場されるとあって、セール初日の7月13日、会場はあふれんばかりの関係者で賑わった。中央の調教師もズラリ顔を添えており、中に栗東・松元茂樹の姿もあった。共に馬を見つめたのは、新冠町でノースヒルズマネジメントを経営するオーナーブリーダーの前田幸治である。

 やがて1頭の当歳牝馬が松元の目に止まった。

 好きなタイプの体つきをしていた。血統についても申し分なかった。そして、その松元の願いを受け入れる形で前田幸治が手を上げた。

 父サンデーサイレンス、母グレートクリスティーヌ、落札価格 6,000万円……のちのビリーヴである。


(続きは、8月25日発売の『優駿』9月号でお読みください)

バックナンバー

2010年: 8月号   7月号  

2010年: 6月号   5月号   4月号   3月号   2月号   1月号  

2009年: 12月号   11月号   10月号   9月号   8月号   7月号   6月号  

ご購入はこちら

ページ上部へ